5.モルモット多核白血球の採取(和賀巌)
[材料/ 器具]
(1)モルモット(通常350gのハートレー系を使用、雌の方がおとなしいので採取にむく。細胞 の回収率に性差はないらしい)
(2)消毒用エタノール(70%)
(3)50mlのディスポーザブルシリンジ
(4)注射針:18G
(5)解剖器具:ハサミ、ピンセット
(6)ポリプロピレン製遠心チューブ(ファルコン(50ml)が便利である。)
(7)PBS(4℃に冷えている方がよい。 2mMEDTAをいれてもよい。)
(8)誘因物質
カゼイン(sigma社) :2%に調整する。 0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で溶解後中和して 使用するマニュアルが普通であるが、MilliQ水に懸諾しただけのカゼイン溶液でも大量 の多核白血球を集めることができた。モルモット1匹あたり35ml(体重の1割)を投与する。 1匹から以下の方法で通常約1~3x108個の多核白血球が回収できる。
(9)てぶくろとマスク(アレルギーにならないように着用しましょう)
(10)ジエチルエーテル(動物の麻酔用)
(11)黒色のビニール袋(動物の麻酔用および死体処理用)
[方法/コツ]
(1)細胞を回収する前日には絶食させ腸を細くする必要がある。
(2)2%カゼイン水溶液をモルモット1匹あたり35ml注射(ip)する(*)。
(3)18時間後、黒色のビニール袋を3重にしてモルモットをいれる。
(4)袋の口よりジエチルエーテルを10ml ほどいれる。その時モルモット(♀)の手足を
抑えておくこと(**)。
(5)モルモットが深い眠りについたら(約3分)、申し訳ないが咽を切り脱血死(**)させる。
(6)脱血死の動物を70%エタノールで消毒する。
(7)腹部外皮に切れ目をいれる。
(8)外皮をはいで腹膜を露出させる。
(9)冷PBSを50ml腹部に注入する。
(10)3分ほど腹部(***)をマッサージして細胞を浮遊させる。
(11)脂肪塊をさけて注入したPBSをなるべく多く回収する。
(12)遠心チューブ(氷冷)にいれる。
(13)再度冷PBSを50ml腹部に注入し細胞を回収する。
(14)遠心(1000rpm,5min.4℃)する。
(15)沈澱(白血球)をよくタッピングして再度PBSで洗浄する。
(16)沈澱の細胞を計測し実験に使用する。
[注意点]
* :普通「 ウィーウィー」と鳴きながら暴れる。その時は目を抑えると不思議とおとなし くなるので試してみてください。
** :抑えるのが苦手のかたは、デシケーターにジエチルエーテルを10mlいれ、5分ほどおく。 その後、モルモットをいれれば鮮やかに麻酔することができる。
***:腹部のマッサージでは、腸を中心に行うと回収がよい。肝臓の方までマッサージすると 出血を伴うことがある。
****:通常白色の細胞沈澱が認められるはずである。もし、出血により赤血球の混入があり実 験上不都合な場合は、前記の方法でマイルドに溶血する。
同様の方法をマウスにも利用できる。マウスの場合は2mlの2%カゼインを投与後4時間で通常約1~5x107個の多核白血球が回収できる。