7.大腸菌用培地(石井聡)
そのまま溶かせばpHは約7になるものの、bacto-tryptoneやbacto-yeast extractにはほとんどpH緩衝能がない。培地の場合pHを合わせないことも多いが、再現よくpHの正確な培地を作るときには希釈によるpHの変化を考慮しなければならない。pHを合わせる時の培地の体積をできるだけ増やしておいて、メスアップする時に加える水を最少量にとどめれば希釈の影響は極力抑えることができる。
使用する水はRO(逆浸透圧)水または脱イオン水とし、Milli-Q水は用いない。Milli-Q水は高価(コーラよりも高いと言われている)である上に、あまりにも純粋なために菌の培養には適さないからである。逆に水道水を50%(v/v)くらい入れた方が生えは良くなる(経験談)。
Terrific Broth では確かに菌は良く生えるが、プラスミドが抜け落ちていることが多い。従って、プラスミドを増やすときはLB Mediumを用いた方がよいかもしれない。
液体培地
LB Medium / liter
bacto-tryptone 10g
bacto-yeast extract 5g
NaCl 5g
NaOHでpH を7.0~7.5 に合わせメスアップ後、オートクレーブ。
NZYM Medium / liter
NZ amine 10g
NaCl 5g
bacto-yeast extract 5g
MgSO4 7H2O 2g
NaOHでpH を7.0~7.5 に合わせメスアップ後、オートクレーブ。
Terrific Broth / liter
bacto-tryptone 12g
bacto-yeast extract 24g
glycerol 5.04g
900mlにメスアップ後、オートクレーブ。手で持てる程度に冷めたら以下のリン酸バッファーを100ml加える。
Phosphate buffer for Terrific Broth / 100ml
KH2PO4 2.31g (170mM)
K2HPO4 12.54g (720mM)
SOB Medium / liter
bacto-tryptone 20g
bacto-yeast extract 5g
NaCl 0.5g
250mM KCl (1.86g /100ml) 10ml
HClでpH を7.0 に合わせメスアップ後、オートクレーブ。使う直前に2M MgCl2 (19g/ 100ml) を5ml加える。
SOC Medium / liter
オートクレーブしたSOB Mediumが手で持てる程度にまで冷めたら、20mlの1M glucose (18g/100ml 濾過滅菌)を加える(終濃度20mM)。使う直前に2M MgCl2 (19g / 100ml) を5ml加える。
2xYT Medium / liter
bacto-tryptone 16g
bacto-yeast extract 10g
NaCl 5g
NaOHでpH を7.0 に合わせメスアップ後、オートクレーブ。
固形培地
アガープレートは 1.5%のbacto-agar
アガロースプレートは 1.5%のagarose
トップアガーは 0.7%のbacto-agar
トップアガロースは 0.7%のagarose
をオートクレーブ直前に加える。
90mmプレート1枚当たり25mlかそれ以上の培地を注ぐ。(注いでいる培地がプレート全体に行き渡ったときが約25mlに相当する)。150mmプレートは80ml以上。泡が生じてしまったら培地が固化する前にバーナーかライターの炎で焼けば消える。ふたを開けた状態で余分な水分を乾燥させながら固化させる(30分~1時間)。保存中に過度に乾燥してしまうのを防ぐため、パラフィルムなどでふたとの隙間をテーピングする。日付と培地の種類をふたに明記し、4℃で保存する。保存中は、生じてくる水滴が培地に付かないよう上下逆さまにしておく。
抗生物質
抗生物質は基本的に手で持てる程度に培地が冷めたら加える。
Ampicillin 50mg/ml in H2Oを濾過滅菌後-20℃で保存。x1000として使用。
Chloramphenicol 34mg/ml in ethanolを-20℃で保存。x2000として使用。
Kanamycin 10mg/ml in H2Oを濾過滅菌後-20℃で保存。x200として使用。
その他
IPTG 238mg/ml H2O (1M) 原則的に濾過滅菌。-20℃で凍結保存。4microl/plateの割合で使用。
X-gal 20mg/ml dimethylformamide -20℃でアルミホイルに包んで遮光保存。40microl/plateの割合で使用。