16.Non-RIでのハイブリダイゼーション(横溝岳彦、加藤和彦)
Version up @1998年3月18日
現在教室で行われているNon-RI ハイブリダイゼーションの二つのkitについて解説する。Alk Phos、VistraECF共にアルカリフォスファターゼでDNAをラベルするシステムだが、検出法が異なる。Alk Phosの方が、感度、簡便さの点で優れているように思われる。現在可能なことが確認されている実験レベルを列記する。
Alk Phos:Plaque hybridization, Northern blotting, Southern blotting (単離されたphage DNA, plasmid DNAでの)
VistraECF:Southern blotting (単離されたphage DNA, plasmid DNAでの)
Alk Phos direct gene imageを用いたハイブリダイゼーション(横溝岳彦)
Alk Phos direct gene image:Amersham code RPN 3691 (Full system for 50 reaction and 5000 cm2 membrane)
CDP-star detection reagent:RPN 3683 (Detection system for 5000 cm2 membrane)
耐熱性のアルカリフォスファターゼでDNAをランダムラベルし、ケミフルオレッセンスで検出する方法である。75℃まで安定とのことなので、温度でstringencyをコントロールできる。予備実験は、1000 bpのプローブを用いた場合、ハイブリダイゼーション60℃、洗い65℃まで上げても問題がなかった。逆に、ハイブリダイゼーション50℃、洗い55℃ではnegativeを含む全てのplaqueがpositiveになったため、温度のコントロールは重要であると思われる。問題点はラベルの効率の確認が出来ない点、比較的高濃度のプローブが必要な点である(20 mlのハイブリダイゼーションで50-100 ngのdsDNAが必要である。)以下のプロトコールで20mlのハイブリダイゼーションができる。プラークハイブリダイゼーションでは15 cm 40枚の1st screeningでこの10倍程度のスケールで行う必要がある。プローブの切り出しはグラスビーズで行ったが特に問題はなかった。
1.プローブのラベリング
ラベルするDNA(100 ng)を10 μlとなるように水で希釈する。沸騰水浴またはthermal cyclar 99℃で5min処理後、直ちに氷中につけDNAを変性させる。
Denatured DNA 10 micro L
Reaction buffer 10 micro L
Labelling reagent 2 micro L
Cross-linker sol (5x dilution) 10 micro L
ピペッティングで穏やかにまぜ、37℃で30分インキュベート。2時間以内に使用しない場合は等量のGlycerolを加えて-20℃で保存すれは半年間安定。
2.ハイブリダイゼーション
Hybridization buffer:kit添付のHybridization bufferにNaClを最終0.5 M, Blocking reagentを4 %となるように加え、良くとかす。溶けにくいので、Prehybridization用の水浴につけて暖めながら時々転倒混和する。説明書には1-2時間かかると書かれている。また、-20℃で保存可能と書かれているが、いったん凍らせたものを使った場合、Background(というか、ブチブチ)が上がるので、再度良く溶かす必要がある。いずれにしても、事前に暖めておくこと。
・0.125-0.25 ml/cm2となるようにハイブリダイゼーションバッグに入れ、55℃15分プレハイブリダイゼーション。
・プローブを5-10 ng/mlとなるように加え(熱処理してはいけません!)、さらに55℃ O/Nでハイブリダイゼーション。(High targetでは時間を短縮することも可能と思われる)
3.洗い
Stock solution
・0.5 M Na phosphate beffer pH 7.0
・1 M MgCl2
・20 x Secondary wash buffer for 1 L; Tris 121 g, NaCl 112 g, pH 10.0
Primary wash buffer for 1 L
Urea 120 g
SDS 1 g
0.5 M Na phosphate beffer pH 7.0 100 ml
NaCl 8.7 g
1 M MgCl2 10 ml
Blocking reagent 2 g
Secondary wash buffer for 1 L
20 x Secondary wash buffer 50 ml
1 M MgCl2 2 ml
・Primary wash buffer (2-5 ml/cm2, prewarmしておく)で55-75℃、10分 2回洗う。(筆者の経験では1000 bp, 100%マッチのプローブの場合、65℃が適当。55℃ではnon-specificなシグナルが観察された)
・Secondary wash bufferで室温、5分で2回洗う
4.CDP-starによるDetection
・CDP-star detection reagentを30-40 micro L/cm2加え、サランラップで覆う。2-5分放置。
・新しいサランラップに移し、オートラジオグラフィーの要領で感光させる。最初1-2時間で現像して、適切な露光時間を決める。
VistraECFランダムプライムDNAラベリング、シグナル増幅システムを用いたハイブリダイゼーション(加藤和彦)
ケミフルオレッセンス(ECF)とは、ECLとは異なりアルカリフォスファターゼを使用してAttoPhos(蛍光源性基質)のリン酸を解離させAttoFluor(蛍光物質)を生成後、FluorImagerのレーザー(488nm)でAttoFluorを励起させることにより540nm~560nmの強い蛍光を放出するというもので、この蛍光を検出することで高感度の標的分子を検出します。サザン、ノザンブロッティングやコロニー、プラークスクリーニングなどに利用できるとのことです。
Vistra ECF random prime labelling and signal amplification module(Amersham code RPN5752 ¥79,000)
1.プローブのラベリング
ラベルするDNA(25ng ~ 2μg)を10 ~ 34 μlとなるようにTE bufferで希釈する。沸騰水浴中で5min処理後、直ちに氷中につけDNAを変性させる。
Denatured DNA 50ng
Nucleotide mix 10μl
Primers 5μl
Klenow enzyne (5u/μl) 1μl
D.W up to 50μl
ピペッティングで穏やかにまぜ、37℃で1h インキュベート。
0.5M EDTA を2μl加え、反応をとめる。
ラベルしたプローブは-15 ~ -20℃、暗所で6ヶ月は保存可能。
2.ラベリング効率のチェック
5μlのラベルしたプローブと5倍希釈のnucleotide mix(Negative control)をHybond-N+にスポットする。2×SSCで60℃、15minゆっくり振とうしながら洗浄する。
10、25、50、100、250、500倍希釈の5×nucleotide mix を別のHybond-N+に5μlずつスポットする。
UV transilluminator か FluorImager で検出し、プローブのシグナルの強度が100倍希釈の5×nucleotide mix 以上であれば良い。
3.ハイブリダイゼーション
Hybridization buffer (100ml)
20×SSC 25ml
10%SDS 1ml
Liquid block 5ml
Dextran(M.W 500000) 5g
D.W up to 100ml
60℃で30minプレハイブリをおこなう。
プローブを沸騰水浴中で5min処理し、氷中につけ変性させた後10ng/ml of hybri buffer となるように加える。(1.5μl of reaction product/ml of hybri buffer)
60℃、over night でゆっくり振とうしながらハイブリダイゼーション。
1×SSC, 0.1%SDS で60℃、15min ゆっくり振とうしながら洗浄。
さらに、0.5×SSC, 0.1%SDS で60℃、15min ゆっくり振とうしながら洗浄。
ハイブリまたは洗浄操作はRIプローブと同様にSSCの濃度、温度でストリンジェンシーをコントロールすることができる。
4.フルオレセインによる検出
メンブレンを2×SSCで軽くすすぐ。FluorImager(フィルターなしか530nmのフィルターを用いる。)でシグナルを検出する。ここではかなり強いシグナルでないと検出できない。
5.Signal amplification system を用いた検出
Buffer A (1000ml)
1M Tris-HCl(pH7.5) 100ml
NaCl 17.5g
D.W up to 1000ml
メンブレンをBuffer Aで軽くすすぎ、10倍希釈の liquid block を含むBuffer Aでゆっくり振とうしながら1h、室温でインキュベート。
5000倍希釈のanti-fluorescein AP conjugate、0.5%(w/v)BSAを含むBuffer Aでゆっくり振とうしながら1h、室温でインキュベート。
0.3%(v/v)Tween20を含むBuffer Aでゆっくり振とうしながら10min ×3 室温で洗浄。
6.Signal の検出
Detection reagentは試薬(粉末)の入っている瓶に添付のバッファーを加え、10分ほど撹拌して完全に溶かす。(溶解後は分注して凍結保存)
メンブレンをDetection reagentに浸し、サランラップで包む。(メンブレンは乾燥させないこと)
FluorImager(フィルターは570nmのものをセットする)でシグナルを検出する。シグナルは時間とともに強くなる。