2006/5/14 - サーファクタント脂質合成の謎に迫る
1年以上前から進めていた研究計画がある。それは、リン脂質合成の鍵を握るリゾリン脂質アシル転位酵素のクローニングである。アミノアシル転位酵素は20種類あることが知られているが、膜のリン脂質を作るアシル転位酵素はいくつあるのだろうか。こんな課題をスタートして1年、非常にユニークな分子がとれた。それは膜リン脂質ではなく、おそらく肺胞のサーファクタントを作る酵素である。肺胞には表面張力を下げ、肺胞を広げてガス交換の効率をあげるためサーファクタント分子が存在する。これはA, B, C, Dからなるタンパクとジパルミトイルホスファチジルコリンからなる脂質タンパク複合体である。タンパクの合成や転写の研究は多かったが、脂質合成の機序は不明であった。今回、単離した酵素(LPCAT1)がその重要な謎を解く鍵となると思われる。この研究成果はオンラインでJ. Biol. Chem.に発表されているが、重要な研究は岩手医科大学の諏訪部章教授と、小笠原理恵先生との共同による。
肺を潅流した直後。挿管して換気をさせながら心肺潅流すると肺は見事に真っ白となる
いくつかの行程を経て、遠心操作により肺胞Ⅱ型上皮細胞を単離
肺胞上皮Ⅱ型細胞の形態。ラメラ小体の中に脂質タンパク複合体が封入されている
実験が終わった後、盛岡の冷麺を食べて喜ぶ二人